人と他の動物たちとの決定的な違いは、高度な認知機能です。文章を作ったり、道具を作ったり、踊ったり、料理をしたり、芸術作品を生み出したり。人の創意・創作の能力は他の動物と比べると卓越しています。
今回は人と他の動物との違いの中で、人のおしゃべりについてお話ししていきます。
おしゃべりができるようになった遺伝子の誕生
人類考古学的な調査によれば、20万年以前の遺跡には想像的行為を感じさせる痕跡はほぼありませんが、後期旧石器時代に、創作力の爆発が起きていることがわかります。
この時期に。「FOXP2」という人の遺伝子の二ヶ所に変異が起こっていると考えられます。
FOXP2は人だけでなく、サルやマウスなど、他の動物たちにもありますが、人のFOXP2はその二ヶ所で変異が生じているのです。
わずかな変化ではありますが、この二ヶ所変異こそが人の能力に劇的な相転移を引き起こし、言葉を操ることができるようになったのです。
ちなみに、この人型のFOXP2遺伝子を、マウスに組み込んでみるという実験が行われたこともあります。
マウスは、舌や咽頭などの言語を操る身体道具は持ってないので、さすがに言葉をしゃべったりはしませんが、声質や検索意欲が変化していったそうです。
自分の思考力を高める言語の役割
言語の役割は大きく2つあるといわれています。「通信手段」と「思考ツール」です。
通信手段については、誰でも納得できる役割かと思いますが、情報伝達という使い方は、虫や鳥などの鳴き声も同じことです。
もう一つの役割である「思考ツール」として言語を使うことが、人間らしさを作り出しているといえます。
物事を脳において分類したり認識したりするときは、その物事に対応する単語を持っているかどうかが重要になります。
例えば、日本語では「青」という色は、「明るい青」と「暗い青」とどちらも表現すしますが、ロシア語ではそれぞれに相当する単語が別々にあります。ですので、ロシア語で会話をするときは、それぞれの「青」を素早く区別することができています。
例えば、日本語では青と緑の間の色を上手く表現した一般的な言葉はなかなかすぐには思いつきませんが、メキシコ北部のタラフマラ語ではこれに相当する色の単語があります。タラフマラ語で会話するときは、青と緑の間の色をすぐに表現し、理解することができます。
ですので、持っている語彙が、自分の意思や思考や行動を広げていったり、独自のパターンを作っていくのです。
日々、新しい言葉が日本語に導入されてきています。そのたびにその言葉を自分のものにしていくことで、最新の社会観や生活感や考え方を現代にあわせていくことが必要になってきています。
常に言語について勉強することが、自分を最新の状態に保ち、現代の考え方をすることに繋がってきます。
メタファーについて
人と人とのコミュニケーションを豊かにする一つの表現に「メタファー」というのがあります。
「メタファー」とは、直訳すると「隠喩(いんゆ)」です。「メタファー・隠喩」とは、簡単にいうと例え表現です。本来イコールで結びつくはずのないものを「●●は■■だ」という形で言い切る表現で、「人生は旅である」や「彼女は天使だ」などと表現することです。
人生は旅ではありませんし、天使が彼女だったら大変なことですが、これは例え表現だということは自然に理解できると思います。
メタファーは世界中のあらゆる言語に存在するレトリックです。
そして、脳がメタファーをどのように理解するかについて研究がなされております。
これは、自閉症や統合失調症、アルツハイマーの初期症状では、メタファーが理解できず、言葉を文字通りに解釈する傾向が強まるため、日常会話に支障が生じます。このような背景から科学的究明が必要になっています。
ジョークを楽しむ
ジョークやユーモアを楽しむ動物は人だけです。人にもっとも近いとされているサルでさえ、ジョークやユーモアを持っているようには見えません。
かつて、イギリス人の選ぶ「世界で最も面白いジョーク」というコンテストがありました。
いかがでしょうか。
まぁ、イギリス人と日本人の感覚のズレを感じずにはいられないです、、、
日本人とイギリス人では、環境や性格、知識、など全く異なりますので、感覚が違っても不思議ではありません。そのときの気分も影響します。
日本人同士でも感覚には差があります。ユーモアやジョークがその場の微妙な均衡上に成立する高度な遊びですので、他者にとっての「笑い」を自分の「笑い」と比較するのは難しいですね。
異なった感覚を持った人同士がコミュニケーションをとるので、自分と他者とは異なっていると考えた方が自然なことでしょう。
言語を操って他者とコミュニケーションをとるのは人間だけですから、言語の使い方は非常に重要になってきますね。
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